元気をくれる書物たち

くまちゃん

2017-09-30

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くまちゃん

2017-09-30

『太陽のパスタ、豆のスープ』と同じ時期に、失恋小説を読みたいなという同じ理由でネットで検索したら出てきたので、購入して読んでみた本。とりあえず、あらすじです。
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風変わりなくまの絵柄の服に身を包む、芸術家気取りの英之。人生最大級の偶然に賭け、憧れのバンドマンに接近したゆりえ。舞台女優の夢を捨て、有望画家との結婚を狙う希麻子。ぱっとしない毎日が一変しそうな期待に、彼らはさっそく、身近な恋を整理しはじめるが……。ふる/ふられる、でつながる男女の輪に、学生以上・社会人未満の揺れる心を映した共感度抜群の「ふられ」小説。
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 角田さんの本は、以前「キッドナップツアー」を読んでちょっとほのぼのとした気持ちになれたので、ほのぼのな失恋小説かな、と思い期待して読みはじめました。・・・が、正直、あんまり優しくないというか、どちらかというとトゲトゲしい、苦い、失恋小説だったような気がします。そのような印象を受けるのは、おそらく、男女の正直な気持ちが遠慮なくしっかりと描写されているからかもしれません。しかし、あらゆるスタイルの、あまり普通ではないおかしな恋愛、恋人のあり方が描かれているので、次はどんな恋愛の形が出てくるんだろうと、ワクワクして読むことができます。

 興味深いのは、すべての失恋がリンクしていること。最初の物語で主人公がふられ、次の章では主人公をふった人物がふられる側になり、また次の章ではふった側がふられる側になるという形で物語が進みます。この物語の構想は良くできているな、と思いました。なぜなら、ふられる方が主人公になり、次の物語では前の物語でふった側が主人公になってふられるので、物語の主人公が女性・男性・女性・男性と互い違いになります。そして、ふった人物がふられる立場になる時に、過去の自分のふられ方や恋愛を思い出したり、引きずったり、反省したり、人の変わりよう(成長と言った方がいいのかもしれないけれども)を見ることができて、なかなか面白いのです。



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 さて、物語は最後から二つ目の「光の子」で最初の物語の主人公が出てくるので、ここで終わりかなと思ったのですが、なぜかもう一章残っていました。最後の物語の主人公は、前の物語でふった人物ではないので、これは「くまちゃん」とは違う短編なのかな、と思い読みはじめました。でも、全く関係ないわけではありませんでした。私が勝手に想像するに、おそらく一度全部書き終わってから、「あれ、重要なことを伝え忘れてる」という感じで書かれた章なのかもしれません。ということで、「おそらく、この章には一番重要なメッセージが書かれている」と思い込み、読み終わったあとに、この章だけもう一度読み直してみました。結果として、私が見つけたことは、この章ではふられたことしかない女性が主人公として登場するのですが、その女性が実はふられるとかふるという行為は、実はどちらかがふる、ふられたということではなく、いつも二人で一緒に恋を手放しているんだ、と主人公が気がつくことでした。

 確かに自分の経験を思い起こしてみると、フルという行為も決して楽ではなくて、苦しい経験であるということを思いおこします。そして、もう一つ。主人公はふられてから、恋愛相談所に通い始め、最初は楽しんでいるのですけど、そのうち、こんなところに通っているから、前に進めずにいる、新しい彼氏ができずにいる、と考えるようになるのです。でも、最後には結局、相談所に通うことは私に必要なことだったのだ、人生に無駄なんてないんだ、と気づくのでです。人はフラれると自暴自棄になりがちで、いろいろな意味のないこと、無駄だと思えるようなことをして、自分を慰めようとするのだけれども、ふと我に帰ると「あ〜無駄なことをしてしまった」と後悔することが多々あるかと思います。でも、実は、そのような無駄と思えるような行為は決して無駄ではなく、立ち直るために必要な行為、または自分が幸せになるために必要な行為だったと思わされるのがこの章の重要な部分なのかもしれません。そして、さらに、失恋さえもが自分を幸せにするために必要なことだったのかも、と感じてしまうのです。

 ということは、結局、この本のメッセージは、人生苦しいことも、辛いこともあるけれど、それらは絶対に無駄ではない、それがずっと続くことなどない、というものだったのかもしれませんね。

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