出産立会いしたパパが一部始終を公開

2023-05-09

2019年1月14日の午前1時。

持っている棒に毒ヘビが絡みつき、その蛇の尻尾をちょん切って殺す夢にうなされて、目を覚ます。

隣を見ると妻が起き上がって苦しんでいる。

出産予定日から2日が過ぎた夜。

昨日は朝から「痛みの質が変わったような気がする」としきりにいう妻。

出産予定日の2週間ほど前から、お腹の中の子が3700g程になってると言われ、お医者さんからは「もう出しちゃいなよ」と言われていたものの出産予定日になっても生まれてくる気配がない。

ただ、昨日は朝から様子がいつもと違った。

10分から12分間隔で陣痛があるとのこと。

なんとなく夜か翌日の朝かという気配が漂う。

もしかしたら、出産予定日から一週間くらい遅れるのではないかという話もあったので、ありがたい話である。

・・・が、結局、昨日は何も起こらず、就寝。

ただ、夜中に何かが起こる可能性があるなと思い、すぐに家を出られる準備をして寝る。

そして、毒ヘビを殺す夢を見て目が覚めたわけだ。

その場で、枕元のiPadを手に取り「毒ヘビを殺す夢」の意味を調べる。

「すべてがうまくいく吉兆」とのこと。

素晴らしい夢を見たなー、と我ながら感動。

しかし、となりでは妻が「どうしようかな~」と悩んでいる。

どうやら陣痛の感覚は5分おきになっているとのこと。

「病院、行ったらいいやん」と私。

30分くらい悩んで「先生も、心配だったら遠慮せずに病院にきたらいいよ、と言っていたから、行くか」と覚悟を決めたよう。

バタバタと準備をする。

「僕も行くから、絶対に起こしてね」と言っていた、小学5年生の息子も起こす。

息子は「え~、なに~」とブツブツ言っていたものの「生まれるよ。病院行くよ」というと、目がぱっちり開いて、俊敏に準備をはじめる。

夜中に起きてすぐに動けるように、普段着を着て眠っていたそうな。

家を出て車に乗り込み、私の運転で病院に行く。

途中でコンビニに寄り、食料や飲み物を調達。

5分間隔で痛みが来るというものの、痛みがない時は、普通に動いている妻。

自分の食べたいものをコンビニで選ぶ。

そばにいて、あまり妊婦だとは思えないような余裕を感じさせてくれる。

病院は深夜2時前なのにもかかわらず、快く受け入れてくれた。

まずは診察室へ。

わたしと息子は待合室に行き、テレビで放映されている映画を見る。

20分ほど経っただろうか。

息子はこの時間「まだ〜、まだ〜」とうるさい。母親を心配してのことなのだろう。

助産婦さんが、待合室に来て、妻のいる部屋へと案内してくれる。

たまたま空いていたから、と個室を貸してもらえている。

助産婦さんの話によると、まだ3cmほどしか開いていないので、まだまだ、時間がかかると思いますとのこと。

で、とりあえず、みんなでその部屋で寝ることになる。

息子は母親のベッドに潜り込む。

私は、病室の椅子を並べて、椅子の上に寝転ぶ。

昔はよく、会社や大学の研究室で椅子を並べて寝ていたので、苦痛を感じることはなく、むしろ懐かしい感じで眠りにつく私。

妻は時々ゴソゴソと起きて、トイレに行ったり、水を飲んだり、うなったり。

私はといえば「一人で動けているあいだは大丈夫だろう」と並べた椅子の上でリラックス。

ここで無理して起きていて、いざという時に眠ってしまっていたら、もともこもないので、とりあえず休むことを優先する。

4時ごろに痛みが激しくなったのか、「やっぱり呼ぼ」と言って助産師さんを呼ぶ。

陣痛室に移動。

息子に、今から部屋を移るからここにいて、と伝える。

生まれそうになったら、また声かけるね、とも伝える。

息子はテレビをつけるがリモコンの調子が悪いよう。

私がドアを出ようとすると、「ねぇねぇ、リモコンの調子が悪いから、呼んでいい?」と手にはナースコールのボタン。

おいおい、とついつい苦笑い。

「今、夜中だし、ここは病院だから、そんなことで看護師さん呼んじゃ、ダメだよ」ととりあえず、慌ててなだめる。

「リモコン使わなくても、本体で操作できるよね?」というと、「できる」と言って、なんとか落ち着いてくれる。

陣痛室に戻ると、助産師さんが検査を終え、生まれてくるのは、陽がちょっと高くなってからでしょうかね、とのコメント。

私も、なんとなく8:00頃かな、というような感覚でまた、眠りはじめる。

私は、陣痛室の妻が寝ているベッドの横でまた一眠り。

5時過ぎ。またひどい痛みが襲いだしたようで唸りだす。

その感覚が、なんとなく短くなっていると思い、そばにあった時計を見ながら、妻の様子を見守る。

どうやら、1分から2分感覚で陣痛が来ているようだ。

しばらくすると、嫁も「2分くらいの間隔になってきた」と言う。

そこで、助産師さんを呼ぶ。

検査をしてもらうと、「分娩室、行きましょうかね」となり、分娩室へ。

私は、息子がいる部屋に行き、テレビモニターのある待合室に連れていく。

その後、手を洗い、消毒をして、白衣を着て、立会いポジションへ。

以前から、出産に立ち合った友人から、「絶対に立ち合わない方がいいよ」と言われていたのでちょっと不安な気持ちになる。

友人A:俺なんかさ、看護師さんが手を握ってください、っていうからさ、手握ったらさ、気持ち悪い!って嫁に言われて、振り払われたよ。

友人Aの嫁:だって、緊張しているせいか、部屋が暑いせいか、手にすごい汗かいてるから、手を握られた瞬間にぬめってして、気持ち悪かったんだもん。

友人B:俺はさ、子供が生まれた瞬間、爆睡してたわ〜。

友人Bの嫁:出産に時間がかかって、なかなか出てこなくて。旦那もずっと起きて、付き合ってくれてたんだけど、旦那だけ焦って、いろいろと動きまわってるのよね。無駄な動きが多くてさ。それで、疲れきっちゃって、肝心な時に爆睡よ。

ということで、できるだけ、薄着になり、できるだけ無駄な動きをしないように我慢をして待つ。

モニターを見ると、待合室で待っている息子がつまらなそうに鼻くそをほじくっている。

カメラに映る角度に移動して、顔を見せて手を振ってあげると、笑顔で振りかえしてくれる。

しかし、彼もほとんど寝ていないので、眠たそう。

分娩室には助産婦さんと、その補助の方と女医さんの3名。

なんか、キャピキャピと楽しそうに、お話しながら分娩をしている。

多分、リラックスさせてくれているのだろう。

「羊水出てないよね」と女医さん。

「出しますか」と助産師さん。

しかし、実際に出したのか、どうかはわからない。

しばらくして、助産婦さんが「尿を取りますね。ちょっと我慢してくださいね」と言って、管らしきものを操っている。

尿を取ったらしい。

5:45あたりから、陣痛が激しくなり、看護師さんが10分くらいかな、と言う。

なにが「10分くらい」なのか、よくわからない。

女医さんが、「待合室の子にも伝えてあげようか。電話あったっけ」という。

補助の方:「ありますよ」

女医さん:「これ、どうやってかけるの」

補助の方:「押すだけですよ」

女医さん:「あれ。かからないよ・・・。あ、かかった。出てくれるのかなー」

私はカメラに向かって、電話に出てとジェスチャー。

小学5年生が電話に出る。

女医さん:「あ、切れた」

おいおい・・・。

再度、女医さんが電話にチャレンジするが、うまくかからない。

そのうち、補助の方が電話をかけて「あと、10分くらいだから」と伝えてくれる。

電話を切った瞬間、小学5年生の姿がモニターから消える。

どうしたんだろうか?

10分と聞いて、トイレにでも行ったのだろうか?

しばらくすると、小学5年生がモニターの前に戻ってくる。

どうやら、自分のメモ帳を取りに行っていたらしい。

メモ帳に何かを書いて破る。

それをモニターに近づける。

「ガンバってー」と書いてある。

正直、涙が出そうになったわたし。

そのメモを見た女医さんたちも「きゃー」と嬉しそうに叫ぶ。

陣痛は順調にきているようで、陣痛が来るたびに2回ずつ踏ん張る妻。

踏ん張っている時は、顔が真っ赤になるので、頑張っていることがよくわかる。

・・・が、6時を回ってもでてこない・・・。

そのうち女医さんが「さっきの状態で、あと10分はないよね〜」

・・・えっ、そうなの?

モニターの向こうでは小学5年生が睡魔と戦っている。

女医さんが「大丈夫かなー」とモニターの向こうの小学5年生を心配。

「今日は、月曜日だからテレビは何やってたっけ」と気遣っている。

そのうち、女医さんがふといなくなる。

戻ってきたかと思うど、「あと5分」と書いたメモを私に渡してくる。

どうやら、モニターの向こうの小学5年生に伝えてあげて、ということらしい。

メモをカメラにかざすと、小学5年生は「わかった」というような合図をする。

その瞬間に「でも、5分じゃ終わらないんだけどねー」と女医さん。

・・・おーーーーーい。遊んでるんかい!!

その後、モニターの向こうの小学5年生は、あくびをしたり、瞼を閉じたり、寝っ転がったり、鼻くそをほじくったりと、睡魔と戦う。

母親はといえば、繰り返される陣痛に合わせて、一回の陣痛に2回踏ん張る、ということを繰り返す。

そのうち、助産師さんらが、「あー、頭出てきましたよー」という。

そのように言われると、私の印象は、もう頭が半分くらい外に出てきたものという印象だった。

補助の方に「見ていただいていいですよ。見えますか?」と言われ、覗いてみると、頭のてっぺんの髪の毛らしきものが小さな穴の中に詰まっているような感じで、ちょっとだけ見える。

えっ、まだそんなの〜、と思いながら、踏ん張りが続く。

嫁の呼吸に合わせて、私も呼吸する。

しばらくすると、助産師さんが「これからは『うーーん、うーーーん』じゃなくて、『はっ、はっ、はっ、はっ』ですよ〜」という。

なんとなく、もうすぐ出てくるんだな〜、と思う。

そのあとは、すごく早かった印象。

最後は、助産師さんが、うわっと、取り出すと、紫色のちっちゃな人間が苦しそうに、目をつぶって、顔を背けている。

うわ、赤ちゃんってこんな色なん!X-manや〜ん、という気持ちが正直なところ。

生まれてしまうと、女医さんが臍のうを切ろうとするが、助産師さんに、「あ〜、そこを挟んじゃ、ダメですよ。こことあそこを、挟んで、ここを切ってください」との指示。

助産師さんの方が、いろいろとよく知っている様子。

モニターを見ると、小学5年生が拍手をしている。

BGMにはHappy Birth Day to You が流れだす。

女医さんが、赤ちゃんを測りだす。

ただ、赤ちゃんが泣かない。

足の裏を女医さんがペチペチすると、「ふわ、ふわ、ふわ」とまではいうものの、「ふえ〜」と収まってしまう。

どうやら、のんびり屋さんで、マイペースな赤ちゃんのようだ。

私は、小走りで待合室に小学5年生を迎えに行く。

彼は、急いでいるのやら、のんびりしているのやら、「ちょっと待ってー」と叫ぶ。

分娩室までは入ることができないので、その手前まで。

その部屋まで来た小学5年生の第一声は「あの〜、トイレはどこですか?」

助手の方が笑いながら「そうよね。ずっと待ってたんだもんね」とトイレに案内。

戻ってくると、手をしっかり洗わされ、消毒させられる。

さて、赤ちゃんとご対面。

生まれたての時ほど、体の色は紫色になっていない。

だいぶ赤みが顔に出てきている。

足と手は何か、膜に覆われているのか、真っ白で、剥がれそうな、剥がれなさそうな感じになっている。

体重を測ると、なんと3,284g。

あれ、3,700gあるって聞いていたのに、意外と普通。

しかし、全然泣かない。

私の赤ちゃんのイメージは、何をしている時でも、泣いているイメージがあるのだが、全然、泣かない。

なんか、すでに人間の社会や世界を達観しているような、すました感じ。

父親に似てしまったのだろうか・・・。

私も、とりあえず写真をiPadでバシャバシャと撮影する。

小学5年生も補助の方に助けられながら、赤ちゃんを抱っこ。

とっても嬉しそう。

撮影した写真を見ると、顔がパンパン。

おそらく、母親に似たのだろう。

目は私かもしれない。

鼻はといえば、赤ちゃんを抱っこしている、小学5年生の鼻そのもの。

鼻は母親、その息子、赤ちゃんと瓜が3つならんでいる。

結局、生まれた時間は6:29。

意外と早かった。

母親は、車椅子に乗せられ、陣痛室に戻る。

小学5年生は母親と対面したところで、「眠いし、もう、俺、帰る」。

はいはい、確かに、頑張りました。

ということで、私と小学5年生は家に帰ることに。

さて、家に帰ると小学5年生は、こたつに潜り込み、パソコンの電源を入れる。

おーい。結局、家に帰りたかったのは、youtube見たかったからなのかい!!

我が家では、1日2時間のパソコン利用制限をしているので、我が家の小学5年生は、日付が変わると、速攻パソコンの電源を入れるのでした。

しばらくすると、妻からのLine。

「今日は、本当にありがとうね」

息子にLineの内容を伝えると、パソコンの画面を見たまま彼はこう言いました。

「こっちこそありがとうよ。妹を生んでくれて」。