元気をくれる書物たち

図書館革命

2019-10-06

  1. HOME >
  2. 元気をくれる書物たち >

図書館革命

2019-10-06

有川浩さんの図書館戦争シリーズ第4弾、最終巻です。

今回は2巻、3巻とは異なり、最初から最後まで一つの大きなストーリーがあり、また図書館戦争シリーズ全体を通じて、図書を通じた表現の自由をいかに守っていくか、という大きなストーリーが見事に重なった内容になっていたと思いました。

それでは、まずは文庫本の裏表紙に記載されているあらすじの紹介から

==========
原発テロが発生した。それを受け、著作の内容がテロに酷似しているとされた人気作家・当麻蔵人に、身柄確保をもくろむ良化隊の影が迫る。当麻を護るため、様々な策が講じられるが状況は悪化。郁たち図書隊は一発逆転の秘策を打つことに。しかし、その最中に堂上は重傷を負ってしまう。動謡する郁。そんな彼女に、堂上は任務の遂行を託すのだった―「お前はやれる」。表現の自由、そして恋の結末は!?感動の本編最終巻。
==========

ちょっと、ネタバレになってしまいますが、この巻では当麻蔵人という人気作家の表現の自由と彼自身を守り抜く、というストーリーの中で、裁判が起こされたり、当麻蔵人を亡命させて表現の自由を規制している日本に対して、国際的な圧力をかける、というそんな作戦が実行されます。

この本を読んでいると、人をうまく乗せたり、動かしたり、自分が共感できる信念を持つ人に人生を捧げたり、また保身や出世のために信念を曲げてしまったり、罪を犯してしまったり、と日本の社会(特に政治でしょうか)の縮図を描いているようなそんな印象を持ちました。

そして、有川さんの素晴らしいところは、そんな激しいイデオロギーの闘争が行われている中で、その中で生きている人間の素晴らしさ、を描いているところではないでしょうか。

例えば、イデオロギーの違いによっていがみ合ってはいても、相手も一人の優しい人間である、という部分が所々に描かれたりするのです。

主人公の味方となっている人々をそのように描くことは、よくあることなので、理解はできるのですが、有川さんのすごいところは、敵であっても、そのように描くところだと思います。

ネタばれになってしまいますが、ずぶ濡れになって歩いているところを、敵の隊員が傘を差し出してくれる、という、敵であってもそんな優しい人間の心を失ってはいない人なんだ、ということがちゃんと描かれているような気がしました。

本当に人間が好きなんだな、と感じさせられます。

現実の世界でも、たまたま所属してしまった組織が掲げる過激なイデオロギーに従って生きていかなければいけないものの、人間の心は失っていない、という人はたくさんいるように思います。

冒頭の原発への攻撃テロは、なんとなく世界貿易センターのテロ攻撃をモチーフにしているような気もしました。
このストーリーの中で、敵の中にも人間らしい人がいることを描いたのは、現実世界のテロ集団の中で活動する人々も人間であるんだ、ということをアピールしているようにも感じました。

総合的な評価としては、エンターテインメント性が高く、かつ日本社会が抱える問題を描きだした、その中で一生懸命、自分の人生を生きる人々、恋愛を楽しむ人々など、非常にうまく、シリアスに、コミカルに描かれていた本だと思います。

あとがきに、当初は3巻のシリーズとして出す予定だったものが、出版社さんからの要望で4巻のシリーズとなった、ということが書かれていました。

2巻、3巻の若干の中だるみ感は、そこに原因があるのかな、とも思いました。

以下、シリーズすべての感想を書いておりますので、ご参照ください。

-元気をくれる書物たち
-, , , , , , , , , , , ,

Copyright© Y's Wise World , 2022 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。