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シンクタンクとは何か 政策起業力の時代

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シンクタンクとは何か 政策起業力の時代

アジア・パシフィック・イニシアチブというシンクタンクの創設者であり、理事長を務める船橋洋一氏の著書。

ちょっと、この組織について調べる必要があり、その際に出版物としてウェブサイトに掲載されていた本の中にこの本がありました。

「シンクタンク」という言葉はよく聞きますが、正直なところ具体的にどのような組織なのか、何をする場所なのかは知りませんでした。

とりあえず、シンクタンクとは何かを知りたくて手に取った本です。

まず、「はじめに」に

この本は、実際にシンクタンクをつくり、動かす中で私が行動し、思考し、発表した実践論を眼目としている。世界(それも米国中心)の最先端シンクタンクの現場で働き、協同作業をし、出版し、そこの研究者と経営者と意見交換し、歓談した経験を踏まえ、シンクタンク・パワーと政策起業力の実態を描くことを第一義的な目的としている。

とあり、「おわりに」には

この本は、そうした省察とかつてシンクタンクで働いた経験とシンクタンクの研究者との対話を織り込みながら、世界のグローバル・シンクタンクの歴史と現状と課題を調査・検証し、合わせて日本のシンクタンクのあり方を考察したものである。

とあります。

確かにその通りで、この本を読むことで著者が思い描くシンクタンク像がよくわかります。

以下、本書より気になった部分です。

・シンクタンクはアイデア産業としてその作業をもっとも継続的、効果的かつ組織的に行う機構にほかならない。

・その中で、トップクラスのシンクタンクはどのようにして影響力を築いているのか。いかにして、そのシンクタンク・パワーを生み出したのか。
 それを因数分解すれば、おそらく次のような要件と条件を取り出すことができるだろう。
1 新しい公共政策のアイデアを打ち出すことができるか。
2 公共政策研究と政策立案を専門とし、それを政治プロセスとメディアを通じて実現する起業家的精神を持つ政策起業家を擁しているか。
3 研究者と政策当局者の双方を招き、ホンネで意見交換し、研究者に当事者意識を持ち公共政策の研究・立案をするため、政府当局者を含む「議論の場を主宰する力」(convening power)を提供できるか。
4 公共政策研究と政策立案の成果物を手ごたえのある形で世に問うことができるか。そのための看板となる刊行物を持っているか。そのための各種イベントを開催し、メディアに働きかけることができるか。
5 非営利型、中立型に基づきながら、財政基盤と利害関心の関係者と知的領域のそれぞれの多様性を維持、発展させ、現状維持を超えた革新的な政策企業の試みに挑戦できるか。

・シンクタンクの第一の使命は、一般市民に対して政策研究と政策提言を知らせ、その知的響板を形づくる(inform)ことである。

・シンクタンクは、新しい政策アイデアを提案できるかどうかがカギである。提案なくして敬意なし、なのである。

・シンクタンクのエコ・システムの要は、財政インフラである。
シンクタンクは財政的に安定してこそ持続力のある影響力を構築することもできるし、シンクタンクにとって不可欠な独立した立場を維持することができる。

・しかし、現在、世界のシンクタンク、なかでもグローバル・シンクタンクは、これまでとは異質の挑戦にさらされている。

・第一に、ポピュリスト的極論が横溢する政治空間、フェイク・ニュースに侵食される言論空間の中で、シンクタンクは支配階層側・エリート側と見なされつつある。

第二に、グローバル化とデジタル化の急速な進展に伴ない、それらのイノベーションを駆使し、グローバルな影響力を持つ金融機関やコンサルティング会社やメディアやNGOの中にシンクタンク的プラットフォーム機能を持つところが増え、既存のシンクタンクのライバルとして立ち現れつつある。

・「ブルッキングス研究所にとっても米国のシンクタンクにとっても、いま最大の課題は、いままでのような資金源から寄付を受けながらなお独立のシンクタンクであると国民に納得してもらえるかどうかだ」

・しかも、その結果として生じたポピュリズムが吹き荒れる中で、シンクタンクの研究がよりどころとする事実と分析そのものへの懐疑が生まれている。政府系シンクタンクの場合、分析の客観性と選択に対してとくに激しい批判が浴びせられる傾向がある。

・TED会議やダボス会議やザルツブルグ・セミナーやディッチリー・パーク会議などの「半分仕事で半分社交の機構」が世界の世論形成と影響力のプラットフォームとなっている。そこでは「the successful(成功した人々)がthe influential(影響力のある人々)と交わりあい、the intellectual(知的なこと)を語り合う。そこから影響力は生まれ、広がる-。

・シンクタンクの場合、そのアイデアは主に公共と公共政策に関わるアイデア、理念、構想、政策である。そして、国民、市民、世界に訴える言葉である。
そのアイデアを思いつき、考えを深め、論理立て、政策の言葉に直し、政治の文法に組み替え、メディアに働きかけ、社会に訴え、世界に発信するいわば政策起業力がシンクタンクには求められる。

・優れたシンクタンクの研究者は専門性に加えて、起業家的精神と新しい概念を生み出す冒険心が大切だと思う。

・スタインバーグは、質問魔である。質問する力こそが、すべての知的行為の原点であり、質問する力そのものが政策提案の力となり、質問する力を持つシンクタンクが、政策起業力を持ちうるシンクタンクである。

・「日本はシンクタンク小国」であると言い、日本は国力に比べてシンクタンクの力が弱く、それが世界における日本のプレゼンスと発信力の弱さとなっている。

・日本の場合、もう一つ特徴的なことがある。
シンクタンクの調査・研究・提案のうち、外交・安全保障政策に関するものが極端に少ないことである。

・世界が日本のアイデアを必要としていても、日本がそのニーズに応えていないとことが問題なのである。

・翻って日本は「主要国で唯一、オフィシャルな歴史家・アーキビストを外務省に抱えていない国」である。

・それでは、日本の政策企業力の課題は何か。

・まず、シンクタンク自体が課題(アジェンダ)設定をすることである。独創的かつ先見性のあるテーマを選び、それを探求し、調査・検証し、政策提言を行う。そのために、政策構想力のある政策起業家を育て、活躍の機会を与える。

・次に、事実と分析に基づく証拠本位(evidennce-based)の政策研究に徹する証拠本位主義を貫くことである。

・それから、利害関係者とオーディエンスの「包摂性」と「境界接続・横断性」を心がけ、それを意識した「議論の場を主宰する力」を発揮することである。

・そして、何度も繰り返すが、「独立性」である。おそらく日本のシンクタンクにもっとも欠けている要件がこの点である。シンクタンクが独立していることの意義は、「自らの調査研究の信頼性を維持する」という点にとどまらない。政府や特定の企業の個別利益から独立してこそ、調査研究やプロジェクトを進める際に、部分最適解ではなく全体最適解をよりよく追求できる。

・最後に健全な楽観主義を持つ。

さて、この本を読むことで、米国の影響力あるシンクタンクがどのような経緯で立ち上がり、発展し、それぞれがどの分野を得意とするのか、シンクタンクの概略史がわかると同時に、日本のシンクタンク力の弱さの要因が分析されており興味深い内容となっていました。

現在、私は役所の下請けのような仕事をするNPOに勤めておりますが、そのようなNPOの職員であっても政策起業家精神を持って、仕事で培ったネットワークを活かして、シンクタンクのような活動をしていってもいいのかな、と現在の私の職場と私自身にも示唆を与えてくれる本でした。

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