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司令官たち―湾岸戦争突入にいたる“決断”のプロセス

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司令官たち―湾岸戦争突入にいたる“決断”のプロセス

ニクソン元大統領のウォーターゲート事件を暴き、『大統領の陰謀』という書籍にてその記録を描いた新聞記者ボブ・ウッドワード氏による著書。

タイトルは『司令官たち 湾岸戦争突入にいたる”決断”のプロセス』となっており、確かにアメリカ合衆国の誰がどのような決断をして、アメリカ合衆国が戦争に突入したかが後半部分を占めるが、オリジナルのタイトルは『The Commanders』であり、副題はありません。

というのも、本の内容は湾岸戦争だけではなく、パナマのノリエガ将軍の確保、フィリピンのアキノ政権のサポートがどのように軍事的に行われたのかが、前半部分であり、著者はそもそも湾岸戦争に至るプロセスを描きたかったわけではなく、国防総省では、どのように重大な決断が下されるのかを示したかった本だからのようです。

おそらく、日本ではこのようなタイトルをつけた方が売れるということだったのでしょう。

さて、前置きはこれくらいにして、本書にはざっくりと

・コリン・パウエルのブッシュ政権からの去就。どのような気持ちで去ったのか、どういう人に声をかけられたのか、

・ディック・チェイニーの国防長官就任。どのような候補が上がっていたのか。いつどこで、誰がどのような会話を誰としたのか、

・コリン・パウエルの統合参謀本部議長就任、

・パナマのノリエガ将軍の確保作戦と失敗と成功、

・フィリピン、アキノ政権の軍事的サポートの判断、

・イラクのクウェート侵攻に対して、アメリカ合衆国はどのような対応をするべきか、あらゆる人々の動き、

というようなことが書かれています。

当時の政権の顔ぶれを知らない人々にとっては、カタカナの名前がたくさん出てきてわかりづらいかもしれません。

幸い、私は、ちょうどこの時期にアメリカに滞在していたので、なんとなく名前を聞けば顔が浮かび上がってきたので、ある程度は理解しやすかったです。

著者は本書にて直接記載はしていないが、おそらく主な情報源はコリン・パウエルと、ディック・チェイニーでしょう。

この二人が、ダブル主演のような感じでこの本のストーリーは展開します。

この本を読んでも、コリン・パウエル氏の私の印象が変わることがなかったことは嬉しかったです。

私が社会人1年生の頃、コリン・パウエル氏の自伝「マイ・アメリカン・ジャーニー』を読みました。

そもそも、彼の自伝を読もうと思ったのは、なんとなく、彼が優秀で、軍人でありながらも戦争を嫌い、できる限り戦争を回避しようと政権の中で努力をしている人という印象を持っていたのと、彼がアフリカ系アメリカ人で初めて制服組の最高地位、統合参謀本部議長まで登りつめたからです。

この印象は、彼の『マイ・アメリカン・ジャーニー』で強くなり、今回の第三者が彼のことを書いたこの記録で、確固たるものとなりました。

この本を読んだ印象では、パウエル氏は、できる限り戦わずして、サダム・フセインを追い出すという作戦を推し続けていたように感じました。

以下、わずかながら私の心に響いた箇所です。

(心に響いた箇所が少ないのは、本書が良書ではないから、ということではなく、私の勉強不足で理解できる部分が少なかったからです)。
        
・パウエルにとってこの事件は、軍事力行使についての自分の見解をある程度裏づけるものとなった。
 第一には、はっきりした政治的目的がなければ、軍事力の行使は正当化されないという点だ。単に爆撃を行うという考えは、この基準を満たすものではない。
 第二の点は、アテネの歴史家ツキディデ(紀元前470〜400年)の表現を借りればもっともよくわかるだろう。「権力のあらゆる示威行為のなかで、もっとも人間に深い印象をあたえるのは自制である」パウエルはこの言葉を座右の銘として、ペンタゴンの机のガラスの下に入れて大事にしている。
 第三の点は、武力行使の意志を誇示することーつまり、人間の顔の前に短刀を突きつけることーは、直接的な武力行使と同様、あるいは、それ以上に大きな効果をもたらすことが少なくないということだ。ツボを心得た外科医のように重点的に威嚇すれば、その効果ははかりしれないものがある。

・私の信条

  1. 物事は最初に感じたほど悪くはないものだ。一晩寝ればよくみえるようになる。
  2. 怒れ、そしてそれを乗り越えろ。
  3. 議論にあまりにも自分を強く押し出しすぎないようにせよ。その論議が否定されたときには、自分も同じ運命をたどらねば ならない。
  4. 成せば成る。
  5. 結果をよく考えて行動せよ。
  6. 反対の事実をあげつらって、すぐれた判断の妨げになりようなことはするな。
  7. 人のことに口出しするな。人に自分の判断をまかせるようなこともすべきではない。
  8. 細かいところを点検せよ。
  9. 功績は分かち合おう。
  10. 平常心を保ち、人には親切に、
  11. 夢をもて。望みは高く。
  12. 自分のなかの不安や他人の懐疑心にはとらわれるな。
  13. 楽観主義を貫けば鬼に金棒。
     この表の左には、パウエルが直筆で格言をしたためた一枚の紙が誰の目にもふれないように貼ってある。それにはこうあった。責任ある地位につくことは、往々にして人を怒らせるものだ。
     ほかにも、ことに仕事のうえでパウエルが信条としている格言がある。彼はおりにふれてそれを教訓としているが、文書には残していない。「自分にどんなことができるかは、実際にやってみなければ決してわからない」この言葉はパウエルには絶対に忘れられないものだった。

・ひとつだけはっきりしているのは、大統領がサウジアラビアの運命に、感情的とまでいえるほど深い関心を抱いていることだった。

・番組自体はとるに足りないものだったが、パウエルはそれを見ていて、もし戦争になったら、たちまちその様子がテレビに映し出されることになるのに気がついた。行動と死と結果と感情が、ヴェトナムのときよりさらに写実的に祖国に伝えられることになるのだ。レポーターとカメラがそこにいて一つ一つの足取りを記録し、軍の仕事をひどく複雑なものにしてしまうだろう。パウエルは確信を持ったことが一つあった。テレビに映る戦争が長引けば、国民の支持を失って遂行が不可能になるにちがいない。

・われわれは長年、外国の文化をごくわずかでも理解する能力に欠けていた、とラングは話を切り出した。われわれはイラクを理解していない。そのために、しばしば次の二つの欠陥仮定がなされることがある。一つは、イラク人が臆病であるという説だ。これは間違っている、とラングは言った。自分は五年かけて彼らを観察し、イラクにも何度も行ったことがあり、彼らの軍隊を現場で目のあたりにし、イラク・イラン戦争を研究し、アラブ人を研究し、戦争を研究してきた。「そういったことをすべて考え合わせると、結論は次のようなものになります。彼らは引き下がらないだろう。巧みに、かつ激しく戦うだろう。彼らはタフだ・・・・・・降伏することはないだろう」彼らをクウェートから追い出す戦いは、最終的に彼らを隠れている穴から掘り出すために、長期の地上戦が必要になってくるはずだ、とラングは言い添えた。

・二つ目の欠陥仮定は、サダムが犯罪者で、残忍で、無慈悲な男だから、彼は正当な指導者ではないという考え方である。これも間違いだ、とラングは強調した。その点については、グラスビー大使と同意見である。サダムは民衆の支持を受けているし、きびしい統制を行っているために、国民の目には正当な指導者として映っている。まどわされてはいけない、ラングは言った。こういった国力不相応の軍隊をもち、しっかり足場を固めた指導者がいる小国を相手にした戦争は、困難で長引くものになるだろう。

・パウエルは、ほとんどが若者で、二十歳前後の者も少なくない兵士やパイロットたちに思いを馳せた。彼らが暗闇のなかを飛んだり、目標を求めて前線の向こう側に投下したりするのだ。結局は、アメリカの若者とイラクの若者との一対一の戦いということになる。どちらも生きることを望んでいる。
 パウエルはいやな予感とさむけを感じた。この戦争は、そういった若者たちの手に握られている。もし彼らが失敗したら、それはパウエルや将軍たち大人が自分の務めを充分に果たさなかったという意味である。それが現実なのだ。

・この生涯でもっとも重大な日に、一つの思いがほかのすべてを圧してパウエルの頭を占領した。そこには喜びも、スリルも、熱意も、戦争熱もなかった。戦争への高ぶった感情はいっさい存在しなかった。彼が考えていたのはただ一つ、「何人の人間が無事に帰ってこられるだろう?」ということだけだった。

細かいやりとりが多く、全体の動きを把握するのがなかなか難しいのですが、これが現実に行われている決断のプロセスなのでしょう。

とっても勉強になりました。

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