KINDLEのUNLIMITEDに入っていたので読んでみました。
PIXARと言えば、今や世代を問わず世界の誰もが知るアニメーション製作会社です。
PIXARという名前を知らなくても、「トイ・ストーリー」「バグズ・ライフ」「モンスターズ・インク」「ファインディング・ニモ」などの映画のタイトルは聞いたことがあるでしょう。
また、アップル・コンピューターの創始者として有名なスティーブ・ジョブス氏が、アップルを追い出された後に買い取った映画会社ということもよく知られています。
この本の著者はローレンス・レビー氏。
ハーバード・ロースクールを修了したのちに弁護士となり、その後会社の経営に携わっていたところスティーブ・ジョブス氏からの誘いにより、PIXARの最高財務責任者となります。
この本はレビー氏がスティーブ・ジョブス氏から電話を受けるところからはじまり、PIXARがディズニーに対等な立場で売却されるまでの話です。
1994年11月にスティーブ・ジョブスから電話を受けたローレンス・レビー氏は、ピクサーの最高財務責任者にならないかとオファーを受けます。
しかし、彼は
「何が悲しくて、16年も苦労ばかりで、毎月オーナーに個人小切手を切ってもらわなければ給料も払えないような会社に入らなければならないのか。そこの最高財務責任者になれば、毎月お金をもらいに行くのは私になるのだ。そんな仕事、楽しいはずがないだろう」
と悩みます。
つまり、今となってはディズニーに並ぶアニメ製作会社であるPIXARは、まったくもって順風満帆ではなかったのです。
しかも現場で働く人々はスティーブ・ジョブス氏への信頼がなく、バラバラになりかけていたようです。
しかし、技術とアニメーションの制作能力は素晴らしかったと言います。
そして、ピクサーの共同創業者であるエド・キャットムとトイ・ストーリーの監督を務めたジョン・ラセターに社内を紹介してもらううちに、「この商業的な成功や賞賛がないに等しい状態で、リーダーとして何年も作品に打ち込んできた。彼らは勝つ。勝つ側の人間だ。いつ、どこで、どのようになのかはわからないが、それだけはまちがいない。いつか、必ず、勝つ。そう確信したのだ」と感じ、ピクサーで働くことに決めます。
入社してからは、スティーブ・ジョブズ氏とピクサーの社員の仲を取り持ったり、ディズニーとの契約交渉を行ったりします。
ただし、これがエンターテイメントは素人の著者にとっては大変な仕事であり、さらにアニメーション界の巨人であるディズニーとの契約だったので、ピクサーにより多くの利益を残すような契約にすることが相当難しかったりします。
また、ピクサー株のストックオプションやIPOにしても、まずはスティーブ・ジョブス氏を納得させること(アップルを追い出された経験があるジョブス氏にとっては、あまり社員や外部の人々に株を持たせたくなかった)、ジョブス氏が納得したとしても、頼りになる投資銀行が見つからなかい、などあらゆる苦難を経験します。
このような苦難を著者がどのように乗り越えたかというと、知り合いに相談するということでした。
知り合いのつてを使って、その分野や作業に強い人を紹介してもらい、一つづつ困難を乗り越えていくのでした。
一流の仕事をする人のネットワークというのは、とてつもなく重要なんだな、と感じました。
さて、私のピクサーのイメージはアップルを追い出されたスティーブ・ジョブス氏が、彼の創造力を活かして創り上げ、「トイ・ストーリー」という素晴らしい映画をいきなりリリースし、大成功を収めたというものでした。
しかし、この本を読むと成功するまでには、とんでもない苦難があったことがわかります。
世界の人々に夢を与える仕事の現実を事細かに描き、興味深い内容となっています。
会社の経営者、将来会社を経営したいと思っている方々には必読の書だと思いました。