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林真理子『ルンルンを買っておうちに帰ろう』感想

2020-10-17

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林真理子『ルンルンを買っておうちに帰ろう』感想

2020-10-17

先日、林真理子さんの『今夜も思い出し笑い』を読ませていただきました。

そこで、林真理子さんについて調べていると、エッセイストとしてデビュー作となった『ルンルンを買っておうちに帰ろう』がベストセラーとなった、というので古本屋で入手してどんな作品なのかを読んでみようと思ったわけです。

この本がベストセラーになったことについて、今風の言葉で言えば「炎上」したのかな、と思いました。

当時(1980年代初期)の、キャピキャピした女性たちにもの申す、ケンカを売ります、的なことがちゃんと「まえがき」に書いてありました。

なにをこわがっているんだろう。
なにをおそれているんだろう。
若い女がもっているものなんてタカがしれているじゃないか、と私はいいたい。
ヒガミ、ネタミ、ソネミ、この三つを彼女たちは絶対に描こうとしないけれど、それがそんなにカッコ悪いもんかよ、エ!
とにかく私は言葉の女子プロレスラーになって、いままでのキレイキレイエッセイをぶっこわしちゃおうと決心をかためちゃったのである。
ものすごい悪役になりそうだけど、ま、いいや。どうせはかない女の命、大輪の花、いやネズミ花火となって果てましょう。

内容はといいますと、自分の気持ちに正直に「みんなは良いって言ってるけど、これは違う、あれは違う、これは気持ち悪い」というようなことをはっきりという内容となっています。

逆に、私にとってはこれがいい、あれがいい、ということもしっかりと言っています。

おそらく若い女性たちも、「周りがそういうのを期待するから、こうしてたけど、ぶっちゃけ、本当は林さんのいう通り」という部分に共感を持たれたのではないでしょうか。

しかも、若いきれいな女性が表立って口には出しにくいことをしっかりと言っているという部分もあるのかもしれないと思いました。

または、それとは逆に、私は絶対にこんな風にはならない、とこの本を読んで感じた女性もいるのかもしれません。

つまりは、味方も敵も読んでくれたのでしょうね。

こんな記述もありました。

これは私の友人も同じと見えて、「写楽」の森下愛子のヌード写真を見ていた時、
「ちょっと見てよ、こんなきれいなからだだったらどうする」
と質問したら、
「バカだね!」
とどなった。
「こんなからだしてたら、街に出てかたっぱしから男と寝ちゃうわよ」
私の友人の中では、比較的まじめな方に属する彼女がそういったから、女はみんな同じようなことを考えるのだなあと胸をなでおろした。

文庫版の解説を高橋睦朗さんが書かれておりますが、「そうなんだー」と思う箇所が一箇所。

「ルンルンのお手柄をもうひとつ挙げれば、現代の言文一致の達成ということだ」。

今となっては、いわゆる話し言葉がそのまま文章になっていることは多く見かけますし、別に違和感も感じません。

でも、この時代、書き言葉と話し言葉はどうも明確に違ったみたいです。

それを林真理子さんが、話し言葉をできる限りそのニュアンス、雰囲気を残したままに、書き言葉に落とし込んだ、という部分が評価されているのです。

さぁーっと読む限り、きれいな女性に嫉妬して、ヒガミを書いているだけの本にも思えるのですが、そこにはしっかりと考えられた当時の社会・女性への批判が含まれているようにも思えました。

80年代初期の女性がなにを考えていたのかということを感じることができて興味深い本でした。

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