お役所の仕事と「民間感覚」

おとといくらいから、有川浩さんの『県庁おもてなし課』という本を読みはじめました。

まだ、半分程度しか読んでないのですが、お役所の体制をおもしろ、おかしく表現していて、お役所と仕事をしている私にとっては、笑える部分もあれば、背筋がピンと伸びるような、そんな記述が結構多く、小説ながらも啓発本として読んでいるような錯覚に陥ります。

まだ、全部読み終わったいないのですが、本全体の感想は後日紹介させていただくとして、今回は、気になった部分、特に「民間感覚」という言葉について紹介してみようと思います。

これは、小説の最初の方で、県庁に勤める主人公が「観光大使」をお願いした作家の方に放たれた言葉です。

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「あんた達に決定的に欠けてて、客を獲ろうとするなら絶対に必要なものがある」
「民間感覚だ。あんたたち、自分の都合しか見えてないんだよ」
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私は市役所の仕事を受託するような組織に勤めております。

その中で、イベントの企画なども行うのですが、私があるイベントを最初に担当した時に、市役所の担当者からこんなことを言われました。

「市役所としては、新しい取り組みを行って苦情がくるよりも、今までと同じイベントを行って、苦情が来ない方がよっぽどかいいのです。ですので、苦情がくるというリスクを犯して新しい取り組みをやることは、認められません」。

市民のためのイベントであるにもかかわらず、市役所の都合で動く、こんな様子がこの本には描かれていて、興味深かったわけです。

また、小説の最初の方では、市役所の時間感覚が民間や市民の時間感覚よりも大きくずれている、ということが同じ作家さんから言われたりします。

最近は私も市役所の雰囲気に流されて、民間感覚を失いつつあるような気がします。

そもそも、民間感覚があったのかどうかは微妙なところですが。

そこで、もう1つ大きな問題が生じます。

一部の市役所の方々は「民間感覚がない」ということには気がついているのですが、大学を卒業してすぐに市役所に入ってしまった方には、「民間感覚」がどういう感覚なのかわからないのです。

つまり彼らには、「私たちは一般の市民とちょっと違う」という感覚しかなく、それがどのように一般市民と違うのかどうかはわからないのです。

そして、更には、市役所に入ってしまうと、特に地方都市ではエリート意識を持ってしまうので、自分たちのやり方が正しい、と信じ込んでしまうこともあるのです。

こんなお話を書いていると、以前、話題になったドラマ「半沢直樹」を思い出しました。

半沢直樹の妻が、お役所の役人に放った言葉です。

「ここは主人の家であると同時に、私の家でもあるんですからね。主人は銀行員という立場上、何も言えないかもしれないけど、私は一般市民だから言わせてもらうわよ。あなたたち役人の常識はねえ、霞が関じゃ通用するかもしれないけど、世の中では通用しませんからね。
そういう非常識な役人が、この国をダメにすんのよ!」

当時は、役所の方とお仕事をすることがなかったので、笑ってそのドラマを見てましたが、今、お役所の方との付き合いが増えることによって、このセリフを聞くと、苦笑いしかないですね。

アイキャッチ画像はまぽさんによる写真ACからの写真