「研究職に就かなくても研究できる」は本当か?
大学の研究職を離れて、現在NPO法人に勤務している私ですが、NPO法人にいながら研究を継続していくことはできないだろうかと日々考えています。
そこで、
荒木優太(編著)『在野研究ビギナーズ 勝手にはじめる研究生活』(明石書店)を読んでみました。
サラリーマンをしながら研究を続けている人が、どのように研究活動を続けているのか大変参考になりました。
研究だけでは生きてはいけないと感じたら、研究を辞めて企業に就職するだけが選択肢ではないということがわかります。
実際に、サラリーマンをやりながら研究を続けている人がいるのですから、働きながら趣味として研究をすることは可能なのです。
そもそも、研究者とは学会等で発表して、その内容に基づいて論文を書いて、学術雑誌に投稿して、掲載されれば研究者と名乗っていいので、正直、どこに所属しようが、無職であろうが研究者であることは可能で、また研究を続けることも可能なのです(ただ、研究費用を捻出することは難しいかとは思いますが)。
研究続けたかったけど、お金もないし、時間もないし、とすごく好きだった研究を経済的理由や、結婚、出産などで諦めていた方々の背中を押してくれる内容になっています。
それでは、以下、私が気になった本書の内容を引用します。
研究するとはどういうことなのか?
この問いについて、第二章の工藤郁子氏が回答してくれています。
「稼いだお金で学術書を想うさま勝っては積み、ときどき読む。有給休暇をとって学会に行き、たまに口頭発表をする。まれに論文を書くが、別にアカデミック・ポスト(大学などの常勤研究職)を狙っているわけではない。研究の楽しさを満喫し、自分を満足させることを主目的として、やっている」。
「環境に飲まれると、選択肢がないと思いがちだが、実はそうでもない。どこにいても、さまざまなやり方で、研究は楽しめる」
研究職にない人はいつ研究をしているのか?
サラリーマンなどをやりつつ研究を継続したい人、研究を行い人には第3章の伊藤未明氏と第八章の内田真木氏の言葉が参考になります。
伊藤
「毎週一定の時間を研究に充てることーーーーーー単なる「自称研究者」になりたくないので、一定のペースでアウトプットを生産しようと思っている。そのためには一定の時間を研究にあてることを日常生活のサイクルに組み込む必要がある。目指しているのは週八〜10時間だが、これまで15年間の在野研究を振り返ると、とてもこの目標は達成できなかった(平均的にはせいぜい週四〜五時間と行ったところか)。特に五〇歳を過ぎたあたりから、土曜日の午前中を研究に使うという体力がなくなっているのを感じている。また、月曜から金曜まで、研究から離れた生活をしていると、前の週末で考えていたことが中断され、土曜日に再び頭のエンジンをかけるのに相当なエネルギーを使うのも、体力的にはしんどい。年末年始やゴールデンウィークなどはまとまった研究時間が取れるので、思考の連続性が重要となる執筆にあてることにしている。」
「特に私のように、研究活動と会社員としての職務に何の関連もないという場合は、どちらか一方の仕事が他方の仕事の時間を奪うような状況になるとかなりの精神的なストレスを覚えるので、そのストレス管理はなかなか大変だ。」
内田
「私が実践している時間確保のための工夫は「研究ノート」である。「研究ノート」は、民間企業の理系研究員である友人から教えてもらったもの。まず、三十五行のノートの見開きに、あらかじめ一ヶ月分の日付を記入しておく。二行で一日分とし、毎日、研究内容とおおよその研究時間(分単位)を記録する。
好きなことばかりやっていていいのだろうか?
好きなものを研究していていいのだろうかと悩む人には第七章で朝里樹氏が紹介している水木しげる氏の言葉が参考になります。
第一条、成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。
第二条、しないでいられないことをし続けなさい。
第三条、他人との比較ではない、あくまでも自分の楽しさを追求すべし。
第四条、好きの力を信じる。
第五条、才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ。
第六条、怠けの者になりなさい、
第七条、目に見えない世界を信じる。
研究職にない人は研究費もないのに、どうやって研究しているのか?
研究職にない人が研究をする場合、書籍の購入、フィールド調査、学会参加の交通費などは全て自腹を切らなければならない。
研究費のない研究者はどのように研究をするべきなのか、星野健一氏は以下のようにいう。
「では、調査する時間はコンスタントに取れるが、生活費以外には殆ど金をかけられない私のような在野が、一体、どんな研究に取り組めるのか、それが問題だ。
この点では書評がいいと思うのだが、単なる本の紹介ではありふれている。そこで私が推奨したいのは、紀要の経年調査である。」
まとめ
以上の他にも、14人の在野研究者(特に研究機関に所属しない、研究職にない人)の考え方や実際の研究方法が書かれていて、研究を続けたい、研究をしたい、でも普通に仕事をしている人はどうやって研究するの?と思っている方にはおすすめの本です。
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