『天の瞳』(灰谷健次郎著)に学ぶ子育て
みなさんが考える理想的な子どもとはどんな子どもでしょうか?
リーダーシップがある子、正義感が強い子、頭が良い子、素直な子、人の気持ちがわかる子、優しい子など色々と理想的な子どもの要素はあるかもしれません。
灰谷健次郎さんの著作『天の瞳』の主人公である小瀬倫太郎は、これらの要素のほとんどを持ち合わせている、みなさんが考える理想的な子どもかもしれません。
小説の中の人物ではありますが、小瀬倫太郎はなぜ理想的な子どもに育ったのでしょうか?
この記事では灰谷健次郎さんの著作『天の瞳』の主人公、小瀬倫太郎がなぜ理想的な子どもに育ったのか小説の中らヒントを探し出してみたいと思います。
この記事を読めば、みなさんが理想的だと考える子どもを育てるヒントが見つかるかもしれません。
ぜひ、参考にしてみてください。
『天の瞳』の小瀬倫太郎とはどんな子ども?
小瀬倫太郎の特徴を挙げるとすれば、わんぱく、誰とでも平等につきあう、正義感が強い、社会の不条理とは徹底的に戦うなどが挙げられるでしょう。
たとえば、倫太郎が頻繁に通う駄菓子屋には障害を抱えたシュウちゃんという成人男性がいます。
倫太郎はこのシュウちゃんと仲が良く、気を使うこともなく隔たりなくつき合っています。
また、小学校5、6年生の時の担任だった児童を力づくで押さえつけようとするヤマゴリラ先生とは徹底的に戦います。
ところが、戦っているにもかかわらず、休日に自然観察を楽しんでいる先生を見つけては先生を見直したりもします。
さらに、中学生になって不良グループに目をつけられてしまった倫太郎はリンチにあったにもかかわらず、不良少年たちと和解する努力をしたり、不良少年を作り出している社会の根本的な問題を解決しようと奔走したりします。
自分の子どももこんな風に育ったらいいなと思う方は多いかもしれません。
それでは、なぜ小瀬倫太郎はこのような子どもに育つことができたのでしょうか?
絵本をたくさん読んでいて読書量が多い
人は読書をたくさんすることで、想像力、共感力を高めることができると言われています。
小瀬倫太郎も小説の中で幼い時から絵本をたくさん読んでいることが示唆されています。
かの天才アインシュタインも以下のように言っています。
頭の良い子ども育てたいのであれば童話を読み聞かせなさい。もっと頭の良い子どもに育てたければ、もっと童話を読み聞かせなさい
If you want your children to be intelligent, read them fairy tales. If you want them to be more intelligent, read them more fairy tales.
読書をすることで、主人公がその時何を考え、どんな気持ちでいたのかを想像したり、共感したり、自分だったらこうするのに、という想像力や共感力を育んでくれます。
小瀬倫太郎が人の気持ちを理解できる優しい子どもに育った背景には、読書量の多さがあるのかもしれません。
祖父とたくさん会話をしている
祖父母が近くにいて子どもとたくさん会話をすることには子どもの成長に大きなメリットがあると言われています。
祖父母は自分の子どもの家族のあり方を鳥瞰的、第三者の視点から見ることができます。
初めての子育てでイライラしている親は、落ち着いて状況を見極める余裕がありません。
そんな時に、祖父母が孫に対して「お母さんたちは、あなたが嫌いなわけではなくてね・・・・・・」というような状況説明ができれば、子どもは安心して親や大人に反発する気持ちを抑えることができます。
また、両親以外の多様な価値観を学ぶこともできます。
子どもが両親とだけふれている場合、子どもが両親の価値観や知識量を超えることはありません。
しかし、両親以上に豊富な経験と知識を持つ祖父母とふれあうことで、子どもが吸収する価値観や感受性、知識は膨大な量になるのです。
倫太郎は大工の棟梁であった祖父とたくさんの話をして、大工のこと、人づきあいのことをたくさん学びます。
祖父の存在は倫太郎の人間形成に非常に重要な役割を果たしているのです。
話を聞いてくれる大人が周りにたくさんいる
話を聞いてくれる大人が周りにたくさんいるということも子どもの健全たる生育に欠かせません。
子どもが安心して話ができる大人が周りにいるということは、子どもの居場所が増えるということでもあるからです。
小瀬倫太郎の周りには、幼い時に通っていた保育園の先生たち、頻繁に通っている駄菓子屋のおばあちゃん、保育園のお手伝いをしていて倫太郎たちが通う少林寺教室や本屋を運営するあんちゃん、倫太郎たちに期待を寄せるPTA副会長の庵心籐子などがいます。
みんな倫太郎たちを子ども扱いすることなく、悩みや、相談をバカにせずにしっかりと聞いてくれるのです。
いろいろな大人と話をすることで、子どもたちは社会の多様性やあり方を学び、多様な価値観、解決策や答えが一つではないことを学びます。
周囲の大人との会話は社会に対する子どもの寛容性と包容力を高めることに寄与するのです。
判断の基準となる確固たる教えがある
小瀬倫太郎には社会を生きていく上での指針、判断の基準となる確固たる教えがあります。
それらは、おじいちゃんから教えてもらったり、少林寺拳法の道場で学んだりしたものです。
たとえば、倫太郎の祖父はこんなことを言います。
「人に好き嫌いがあるのは仕方ないが、出合ったものは、それが人でも、ものでも、かけ がえのない大事なものじゃ。お前がさっき、はじめは、ないと言っておった草の実をよく 見ると、ひげがあった。出合いを大切にすると、見えなかったものが見えてきた。」「好き嫌いが激しいと、これは嫌い、これも嫌いとせっかくの出合いを遠ざけてしまうか ら、見えるものでも見えなくなってしまう。」と教えてもらいます。
また、少林寺拳法の道場では「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを」ということを学びます。
説明するまでもありませんが、人生の半分は自分の幸せのために生きて、あとの半分は他人の幸せのために生きなさい、という教えです。
これらの教えが、倫太郎にリンチをした不良少年たちに対しても共感したり、不良少年を生まれさせている社会の根本的な問題を解決しようと奔走する動機にもなっているのでしょう。
まとめ
灰谷健次郎さんが書かれた小説『天の瞳』には小瀬倫太郎という誰が見ても理想的な「子ども」が登場します。
正義感が強く、思いやりがあり、社会の不条理には「ノー」というような子どもです。
このような子どもが育つヒントが『天の瞳』の中には散りばめられています。
- 絵本をたくさん読んでいる
- 祖父とたくさん会話をしている
- 話を聞いてくれる大人が周りにたくさんいる
- 判断の基準となる確固たる教えがある
このキャラクターは灰谷さんが「こんな子どもがいたらいいな」と思いつきで描いただけではなく、長年の教員の経験、小説を書く際の取材などから姿を現したキャラクターなのでしょう。
おそらく、小瀬倫太郎のモデルとなった人物が実際にいて、灰谷さん自身も「どうしたらこんな子どもに育つのだろうか?」と調査を重ねて見つけ出した解答が小説の中に散りばめられているのでしょう。
子どもが素直に育たない、悩みを抱えていそう、と感じた時は、子どもを近くにいる大人や祖父母にふれさえてみるのもいいかもしれません。
子どもにとっても親にとっても、刺激的かつホッとする世界と出会うことができるかもしれませんよ。
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