子どもと外で一緒に遊ぶ方法
環境問題元祖の著作とも言われる『沈黙の春」の著者、レイチェル・カーソンの『The Sense of Wonder』(原文)を、あらためて読み返してみました。
この本を読むのは、これで三度目です。
一度目は学生時代。環境問題に関する本を読みあさっていた頃に、沈黙の春 とともに手に取った一冊でした。
二度目は、環境ミュージアムで働きはじめたとき。代表に勧められ、記憶を確かめるように読み直しました。大学卒業から20年が経っていたので、おぼろげだった印象を、もう一度自分の中に根づかせたいと思ったのです。
そして今回、三度目の読書です。
今回読み返そうと思ったのは、この本が広く読まれている一方で、少し違った形で理解されているようにも感じたこと、そして最近「子どもを外でどう遊ばせたらいいのかわからない」という若いお母さんたちの声を耳にしたからでした。
環境教育に携わる多くの人がカーソンの思想に共感しているのは確かです。
その中でよく聞くのは、
「カーソンが言うように、子どもは幼い頃から豊かな自然にふれさせるべきだ。だから、できるだけ美しい自然の中へ連れて行きたい」
という声です。
けれども、カーソンは、子どもが体験する自然は必ずしも“特別に素晴らしい自然”である必要はない、と語っています。
また、「自然にふれられる環境を整えること」が強調されるあまり、人工的に小さな庭をつくり、珍しい植物を植えたり、子どもが喜びそうな昆虫を放したりする取り組みも見られます。
しかし、カーソンはこう書いています。
Even if you are a city dweller, you can find some place, perhaps a park or a golf course, where you can observe the mysterious migrations of the birds and the changing seasons. And with your child you can ponder the mystery of a growing seed, even if it be only one planted in a pot of earth in the kitchen window.
Sense of Wonderより(日本語は筆者訳)
(たとえ都会に住んでいたとしても、公園やゴルフ場などで渡り鳥の移動や季節の変化を観察することはできます。台所の窓辺の鉢に植えたたった一粒の種であっても、子どもとともに芽生えの不思議に思いを巡らせることができるのです。)
大切なのは、場所の壮大さではありません。
そこで心が動くかどうか、なのです。
カーソンが伝えているのは、「特別な自然体験を用意すること」よりも、「一歩外に出れば、すでに世界は驚きに満ちている」ということのように、私は感じました。
そして彼女が特に強調しているのは、「教えること」よりも「ともに感じること」です。
I sincerely believe that for the child, and for the parent seeking to guide him, it is not half so important to know as to feel.
Sense od Wonderより (日本語は筆者訳)
(子どもにとっても、子どもを導こうとする親にとっても、知ることは、感じることほどには重要ではないと私は心から信じています。)
知識を与えることよりも、まず一緒に心を動かすこと。
外に出たとき、大人は説明する人になる必要はありません。
子どもと同じ目線に立ち、「きれいだね」「不思議だね」と驚く伴走者になればよいのです。
つまり、親御さんが自然に関する知識を持ち合わせていなくても良いのです。
子どもに「このお花、何?」と聞かれたら「なんだろうね?あとで、図鑑で見てみようか?」とか「今度、先生に聞いてみたら?」などと答えを探すために道案内をしてあげれば良いのです。
カーソンは、ありのままの自然、もっと言えば“現実の世界”にふれれば、子どもは自ら問いを抱くと考えていました。
学びは大人の計画から始まるのではなく、子どもの内側から芽生えるものだと。
だから私は、娘の手を引っ張って歩くのではなく、できるだけ娘の後ろを歩くように心がけています。
大人が過度に準備し、設計し、教え込もうとすることは、かえって子どものセンス・オブ・ワンダーを鈍らせてしまうこともあるからです。
センス・オブ・ワンダーとは、壮大な自然体験のことではありません。
目の前の世界に対して、「なぜ?」「どうして?」と心が動く、その瞬間のことです。
子どもは本来、自分を取り巻く世界に対して強い好奇心を持っています。
特別な場所に行かなくても、ありのままの日常の中で、その芽は自然に育ちます。
環境教育とは、何かを教え込むことではなく、問いが芽生える瞬間を大切にすること。
そして、その瞬間を“演出する”ことではなく、“奪わない”ことなのだと思います。
もし「どうやって外で遊ばせたらいいのかわからない」と感じているなら、難しく考えなくて大丈夫です。
子どもを外に連れ出して、そっと後ろを歩いてみてください。
危険なときにだけ声をかける。それだけで十分です。
子どもが自分の興味のままに、立ち止まり、しゃがみ込み、何かを見つめる。
その時間こそが、子どもにとっての最高の遊びなのだと、カーソンは静かに教えてくれているのだと思います。








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