自動車絶望工場
1年くらい前に読んだ本なのですが、なぜかレポートがこのブログに上がっていない。
ということで、思い出しながら簡単にこの本の感想を書いておこうと思います。
短めですけど。
著者は私からするばルポライターの王様と言いますか、私たち一般人が知らない日本社会のあらゆるところにメスを入れて、リアリティを伝える鎌田慧さん。
一見、弱々そうに見えるかたではありますが、取材力と書かれている内容からはとてつもなく強い精神の持ち主だということがわかります。
さて、この自動車絶望工場ですが、1973年に初版が出版されております。
当時は、日本の経済成長の真っただ中で、トヨタ自動車が合理化生産方法によって、世界に躍動し始めた時期でもあります。
そんな時に、著者はトヨタ自動車のとある工場の季節工として働き、その労働の酷さをこの本の中で記載するわけです。
まるで、チャーリーチャップリンのモダンタイムの現代版を笑いなしで見ているような、そんな内容でした。
正直に言って笑えませんし、「世界の優良企業」と思っていたトヨタ自動車の当時の状況はすざましいものだったということがわかります。
・無意識になっても手だけは正確に動いている。
・機械が故障して止まったら、生産量を維持するために残業になる。
・作業中の事故で死亡した人は1階級特進となるが、そのほかには何もない。
期間が満了を迎える前にやめていく人は多く、体調を壊す人も多い。
「次の日から二、三日、右手が利かないままに出勤し(傷病を受けても出勤するのがトヨタの慣習)、掃除などの雑用に就き、同月一三日の夜は、ルーフよりは小さいコロナのボンネットのプレスを命ぜられた。」
と、そのようなひどい労働が生々しく描かれている。
そのような場所に期間満了まで鎌田さんはすごいと思うし、一体何が彼をそこまで頑張らせたのか、よくわからない。
ここまできたら、最後までしっかりといろんなことを見届けてやろう、という気持ちなのだろうか。
このようにルポタージュを書くために、体を張った体験ができる著者はやはりすごいと思う。
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