いじめにあっている子どもの気持ちがわかる本 2冊

2023-09-09

子どもがいじめられているとわかっても、どのように話しかけたら良いのか、どういう対応をとってあげたら良いのか悩みますよね。

学校に報告する、先生に相談するなど考えがちですが、それらの行動が状況を悪化させてしまうこともあります。

子どものいじめに対してどのように対応するべきか書かれた本はたくさんありますが、ほとんどは大人の視点だったり、第三者の視点から書かれたものが多く、実はわたしたちはいじめを受けている子どもがどうして欲しいのかという声を聞くことはほとんどありません。

今回は、学校でいじめられた経験のある本人が当時の気持ちを書き表している貴重な本を2冊紹介します。

いじめの壮絶さがわかると同時に、いじめられている子がなぜそのような言動をとるのかを理解することができますし、子どもたちが大人にどういう対応をして欲しかったのかを知ることができます。

ぜひ参考にしてください。

『だから、あなたも生きぬいて』大平光代(2000年)

ちょっと古い本で内容もいじめが本題ではありません。
しかし、著者である弁護士の大平氏は、中学生の時にいじめが原因で自殺未遂をし、その後、素行が荒れて16歳でヤクザの親分の妻になったという経歴を持っています。
彼女のいじめられた経験は凄まじく、その時の気持ち、その時に大人にどのように対応して欲しかったのかが書かれていて参考になります。

以下、本書からの引用です。

自分がいじめられていることを大人に言えない理由

「でも、こいつ、なんか”ちくり”よるのとちがうか」
「ちくったら、どうなるか教えといたほうがいいかな」
「そうやな」
「丸坊主になってもらおか」
「ストリップショーをやらしてもいいな」
「屋上の手すりからつり下げるとか••••••」

<先生に、いじめられていることを話してみようかな••••••>
一瞬そう思った。が、もし担任の教師に報告されたら••••••。
—丸坊主、ストリップショー、屋上の手すりからつり下げる——。
また、A子たちの声が頭の中でこだました。
<あかん。言うたらあかん>
結局、なにも言えなかった。

次の日も、休んだ。
今までこんなふうに休んたことなどなかったので、母も不審に思ったのか、
「学校で、なんかいやなことがあったんか?」
と心配そうに聞いてきた。
「べつに••••••」
と、私はなにもないような顔をした。
<母に言うと、父に知られるだろうし、そうなれば学校にも知られる。学校に知れたら、”ちくり”になる。あの子らに殺される••••••>
そう思った私は、なかなかいじめられていることを言えなかった。

自殺未遂した子どもが望んでいる大人の接し方

いじめに苦しんだ大平さんは自殺を試みます。果物ナイフで何度も自分のお腹を刺したそうです。
しかし、最後はやはり死にたくない、苦しいと思ったようで、大声で助けを呼んで助かります。
しかし、自殺未遂をした後も周りの大人や同世代の方々から悩まされてしまうのです。
以下、引用です。

入院中、担任の教師が何度か見舞いにきてくれた。担任の教師はいつもニコニコしていた。笑うとほっぺたがへっこむ。えくぼかニキビの痕かはわからない。
<この人はなにしにきてんのやろ。なにが、そんなにうれしんやろ••••••>
私を慰めるつもりだったのかもしれない。
が、その無神経さに傷ついていた。

「道を歩くとひそひそ話が聞こえるねん」
ー-ーほらあの人や。あの人の子やで。この前、河川敷で割腹自殺図ったん。きっと親が悪いんや。しっかり教育せえへんからーーー_
「お母ちゃん、道も歩かれへん。そのうえ学校にまで行かへんとなると••••••。お願いやから学校にだけは行って。恥ずかしいから」
ご近所では、親切に気遣ってくれる人もいるけど、なかには興味本位におもしろおかしく言う人もいる。母も辛かったと思うが、私は母のその言葉にショックを受けた。
<私がこんなに苦しんでいるのに••••••お母ちゃんは私より世間体のほうが大事なんか••••••>
母にそう言いたかった。
しかし私は、喉まで出かかったその言葉をのみ込み、
「お母ちゃんがそんなに言うんなら、三年生の一学期から学校に行くわ」
と笑顔で言った。自分が悪いことをしてしまったということも身にしみてわかっていたし、これ以上、母に嫌われたくなかったからだ。

なにも精神科が悪いと言っているわけではない。行く必要があるのなら、どうしてはっきりと説明してくれないのか。子どもでもきちんと説明してもらえたら、納得して自分から進んで通院もする。それなのに、なんの説明もないまま連れていかれたことで、このとき、母に対し不信感を抱いた。
病院ではテストばかりされ、いじめられて苦しかったことは、なんにも聞いてくれなかった。屈辱だった。
<自殺未遂をしたのは、いじめられたんが原因や。私は、どこもおかしくない。おかしくなんかない••••••私は、ごく普通の子どもや!>

—死に損ないーーー
クラスの生徒から、この言葉を聞いたとき、
<もうここには私の居場所はない••••••>
そう思った。そして、
<傷つき弱っている者に対し、平気で誹謗中傷する。こいつらに人間の心があるのか。もしこいつらが人間というのなら、私は、今すぐ人間をやめてやる••••••>

何とかやり直そうと思っている子どもが大人から期待していること

失敗をしたときや、人に迷惑をかけた時など、子どもは子どもなりにどうしたらやり直せるのかを考えます。
「このままでいいや」と思う子どもはほとんどいません。
しかし、そんな子どもの気持ちや努力を踏みにじってしまう言動が大人に見られると、子どもは人に対する信頼を失ってしまいます。
大平氏の体験は以下のように綴られています。

私は、美容師になってやり直そうと思い、美容学校受験の準備をした。高校受験ほどではないが勉強した。折り目のついていない真新しい教科書を広げて最初から読み、自分なりに勉強した。
無事合格したので、うれしくて、真っ先に担任の教師に報告しようと思い、合格通知書を握りしめて、学校へ行った。そして職員室のドアを開けた。
すると担任の教師は、私に気がついて外に出てきた。私は、合格通知書を差し出し、
「先生あの〜」
と声をかけた。そしてその続きを言おうとすると、担任の教師は私の言葉をさえぎり、
「なんやその髪の毛は。そんな髪の毛ではどこへ行ってもあかんぞ」
とだけ言った。そして、合格したことについては、なにも言わずに不機嫌そうに教室のほうへ行った。
<今まで先生に反抗ばっかりしてたから、謝るつもりで、真っ先に合格したことを報告しようと思ったのに••••••>
勝手な思いかもしれないが、私はたった一言でいいから、
「おめでとう、頑張れよ」
と言ってほしかった。髪の毛も、これから家に帰って真っ黒に染め直すつもりでいた。
しかし、担任の教師に、差し出した合格通知書を手に取ってももらえず、どこに合格しようとしまいと知ったことか、という態度を取られたことに対し、
<もうどんなに努力してもあかんのか••••••なにを言うてもあかんのやな••••••>
と見捨てられた思いがして、なにもかもやる気をなくした。

「でも高校も行かんと美容学校に行くって、田舎のおばさんにどうやって説明しようかなぁ」
母は、高校に行かないということが、よっぽど恥ずかしいようで、親戚への説明に苦慮しているようであった。
「なぁ〜、そんなに恥ずかしいの••••••」
「えっ?」
「そんなに恥ずかしいのかって聞いてんねん」
「そういうわけともちがうけど••••••」
「ほなどういうわけやねん••••••」
「••••••••••••」
なにも言えなくなったのか、黙ってうつむく••••••。そんな母の様子を見ていると、心の底から腹が立った。
<あんたがいちばん大切にしている世間体とやらをぶち壊してやる••••••>
私はそのまま家を飛び出した。

『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由』安田祐輔

2冊目は『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾をつくった理由』です。
著者の安田祐輔さんは現在、居場所のない子どもたちのための学習塾を経営しています。
彼は、発達障害のために小学生の頃からいじめられるようになりました。
また、良い大学を卒業して大企業に勤めている父のDVと素行の悪さを見て「勉強しても良い大学に入っても幸せになれない」ということを悟り、幼くして勉強に意味を見出せなくなってしまいます。
いじめられたり、親から見放された著者の気持ちが書かれています。

親の言動によって心が荒れていく子ども

子どもは大人が思っているよりも、ずっと洞察力を持っている。誤魔化されれば誤魔化されるほど、僕は人を信じることに臆病になっていった。

やがて僕は「他者に期待するから、苦しくなる」ということに気づくようになった。
はじめから親に期待しなければ、僕は悲しまなくて済むのだ。
人は必ず裏切るのだから、人を信じないことが、僕の生きる術となった。

大人から見捨てられた子どもの気持ち

「ゆうすけは、この後どうしたいの?」
母は不意に僕に聞いた。
「僕はお父さんと住むよ。貧乏は嫌だから」
僕は母に伝えた。
「••••••わかったわ」
母はホッとしたような、悲しそうな、どちらともとれるような顔をしていた。
本当は母と暮らしたかった。
けれども、弟が母と暮らす以上、僕が母のもとで生活するのは何か「正義」ではないような気がした。

父方の祖父母との生活にもなじめず、祖父母とのケンカの後は家出をして友人の家に泊まったり、公園のベンチで寝たりもした。
夏の公園で寝ていると、いつも蚊に刺された痒さで目が覚めた。
野宿には長袖長ズボンが欠かせないことを、その時に知った。
──僕なんか誰にも必要とされていない人間なんだから、このまま死んでもかまわない  真っ暗な山の中の公園で野宿を続けた。
夜空には月が冷たく輝いている。まるで暗い井戸の底にいるような気分だ。
いつ死んでもいい……。
そんな思いを胸に抱きながら眠りにつく。

僕の母のせいで、その人は父と長らく結婚できなかった。だから、「再婚相手」は僕の前で、僕の母について罵詈雑言を吐いた。
でも、僕は何の反論もしなかった。なぜなら、この家に置いてもらえるだけで、「幸福だ」と感じなければいけなかったからだ。
僕には他に行く場所がなかった。時には夜おそく帰ると、ドアにはチェーンがかけられていることもあった。外からは空けることができない。
そういう時はいつも公園のベンチで寝た。

ーーーーーーどうして普通の家庭に生まれることができなかったのだろう
夜、目を瞑ると、その問いに頭が支配されて、眠れなくなっていた。
生まれてから17年間、僕はどこにも居場所がなかった。
僕は何も悪くないのに、生まれ育った環境のせいで、こんなことになってしまった。
ーーー僕はなぜ生まれてしまったのか。
ーーー自分が生まれた意味はなんだろうか。
ーーーこんなに苦しい思いをするために、僕は生まれてきてしまったのか••••••

いがみ合う子どもたちの背景にあるもの

「彼らも大変なんだ。例えばあいつは、小学校の時に親が蒸発して、今は妹と2人で暮らしている。建設現場の仕事で妹の生活費も稼いでいるんだ」
「••••••••••••」
そう、僕も彼も社会の弱者だったのだ。
弱者同士でケンカして苦しめ合っている現状をバカバカしいと思うようになった。社会とは何て不条理なんだろうと。
普通の家庭で生まれ育った幸せな子どもたちは、ちゃんと学校に行って、誰も恨まず、いがみ合うことなく生きていくのだろう。
でも、普通の家庭に生まれることのできなかった僕たちは、いがみ合って殴り合ったりして、誰も得をしない戦いをしていた。
とても、悔しかった。

居場所を探す子どもたち

大平さんも安田さんも、普通の子どもたちが当たり前のように持っている自分の居場所を見つけることにとっても苦労しています。
自分の居場所を見つけるために、彼らは家を出て、その結果さらに状況は悪化していくということになってしまうのです。

大平光代氏の場合

<どこへ行っても受け入れてもらえなかった。仲間が欲しい。ひとりぼっちはいやや。自分の居場所がほしい••••••>
そんな気持ちでいた私が行き着いたところは、暴力団の世界だった。そして、気づいたときには、暴力団組長の妻となっていた。

若い衆といっても四十代五十代の大人、いきなり十六歳の小娘が姐さんづらして座っているのが我慢ならなかったのだろう。あからさまに嫌みを言われた。だけど私は自分の居場所がほしかった。なんとか認めてもらいたかった。
<受け入れてもらうためには、この人らと同じようにせなあかんのやわ••••••>
そう思った私は、この世界で生きるために、背中に刺青を入れることに決めた。

安田祐輔氏の場合

いじめられないために髪を少しだけ自分で染めた。不良っぽく見せればいじめられないだろうと思ったのだ。
でも相変わらす孤独だった。

 転校生なのに茶髪、なのに気が弱そうな僕は、不良たちの格好のターゲットだった。  少しずつ、地元の暴走族からも目をつけられるようになり、これ以上舐められないように、見た目も行動も不良ぶってみたりした。
その世界は暴力が全てを支配していた。

ずっといじめられていたり、学校になじめなかったりした子が、新しい学校に行くときに考えること。
それは、入学を機に「人生をやり直す」ということだ。
中学に入る時でも、高校に入る時でも、大学に入る時でも良い。周りには自分ことを知っている人が少ない環境の中でいじめられっ子が考えるのは、「新しい自分をスタートさせる」ということだった。
というわけで、高校に入る直前に2時間かけて原宿まで行った。
パーマをかけ、人生で初めてちゃんと「美容院」で髪を染めてもらった。
いじめられないようにするためには、まず見た目が大事である。

時にケンカもした。心はとても弱いのに、見た目だけ派手にして、周りをにらむようにして歩いたこともあった。

まとめ

子どもには安らぐことがでできる場所が必要です。
家庭に問題がある子どもは、素行が悪くなったり、格好が荒れたりします。
しかし、そこで学校や地域が彼らを見放してしまうと、彼らの居場所はなくなってしまいます。
いじめられて居場所のない子ども、家庭に問題があって居場所のない子どもたちを救うためには、大人の誰かが居場所をつくってあげることが必要なのです。

大平さん、安田さんが苦境からいかに這い上がって成功したのか、その過程を知りたい方はぜひ本をお読みください。

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