クリスチャン・ジャック『スフィンクスの秘儀』感想
『太陽の王ラムセス』など古代エジプトを舞台にした物語を綴ってきたクリスチャン・ジャックの2004年以来の邦訳です。
発刊は2018年なので、まだまだできあがりホヤホヤと言ってもいいかもしれません。
これまで、クリスチャン・ジャックの本を読んでこられてきた方々にとっては、「えっ」と驚きを隠せない内容になっているのが、この本です。
まず、舞台は現代です。
物語を読みはじめると、これは同姓同名の違う人が書いた本なのではないかと疑ってしまいます。
が、読み進んでいくうちに読者をドキドキさせる展開や、物語の根源は古代エジプトの秘儀という点では、やはりクリスチャン・ジャックだなと思わせる内容になっています。
物語は、古代エジプトの錬金術が現代まで受け継がれ、時代は変わっても常に9名の秘儀を受け継いだものがいる、ということが前提となっています。
そして、この秘儀が現代社会の大きな関心となっているシンギュラリティー、AIの世界を支配しようとする現代社会の黒幕から消されようとする、すなわち9名の秘儀を受けついだものが次、次と殺されていく、という物語になっています。
この秘儀を受け継いだものを守るべき動き出した、雑誌記者とその友人。
彼らは秘儀を守ることができるのか!というようなストーリーです。
物語は、エジプトだけではなく、ニューヨーク、アンコールワット、中国、京都、フィレンツェ、タドモル(シリア)など、世界をめぐるものとなっており、現代の世界情勢も組み込まれており、007やミッションインポシブルのようなスパイ映画の趣を見せます。
ラストは、「え、こうなるの」といういわゆるヒーロー的なエンディングではなく、現代社会にあり得るような、「あー、なるほど」というエンディングとなっていて、ちょっと驚かされます。
気楽に楽しく読める本なので、エンターテイメントとしてはなかなかの本だったと思います。
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